ミーティングルーム

 湯の煮たっている小鍋に浸る素麺二束
 軽く 割り箸でかき混ぜる
 日曜日 私のちょっとお昼は手間省き
 小皿に漬け物と塩茹でオクラを切って添え
 小鮎の佃煮

 山椒の風味づけで味わい深い 小魚のしっかりとした歯触り
 それを楽しむ私はふと 思い出す
 職場で先輩のこぼした愚痴話

 大鍋に煮たってくる素麺はグルグルかき混ぜると
 菜箸に重みあり
 「ちょっと昼ごはんが大変なのよ。」
 中学生二人と高校生一人の母は言う
 男児二人の食べっぷりに
 「あたしなんて給食のオバサンよ!お兄ちゃん、五束いくのよ。」

 大黒柱の旦那の食事へ気を遣い
 家計の足しに非正規雇用で働く彼女
 家事に追われ 子育てに疲れ 姑との関係に一人
 車中で涙したこともあると
 私へ 語ってくれた

 ミーティングルームで彼女の溢す生々しい笑いに
 躍る唇 それは
 まるで長い冬 乾いた肌をしらじらと露わし
 時に 大空へ突き刺さり
 時に 骨格の寂しい音の様に鳴り
 すぎて来た 一群の樹
 のようにもみえる

 私の箸先の もの言わぬオクラの緑が平和だった
 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 味わい深いなぁ、と。
    (おかず付きの素麺は豪華です)
    最後から2連目、圧倒的です!

  2. @たちばなまこと
     様へ

     お読みくださり、ご感想のコメントをお寄せいただきまして
    どうもありがとうございます!(*´∇`*)
     私って、いつも…茨木のり子さんの詩、「聞き星」なのかな?
    そんなことを思います。ミーティングが本題の申し送りに入る
    前の、皆さんの雑談がけっこう社会勉強になります。話を聞いて
    もらえるだけで、気持ちが軽くなったり吹っ切れたりしますから。
    私は聞き役に回ることが、多いのです。(笑)
     五連目、力入れました!読み取っていただけまして、嬉しいです。

  3. 煮立っている湯気や素麺の匂いや割り箸でかき混ぜる手の感触が伝わってくるような、五感が刺激される、臨場感溢れる詩をありがとうございました。最後の、オクラの緑が平和だったというところ、とても印象的でした。先輩の人生に思いを馳せつつ、ご自分を振り返ってみた気持ちが伝わってきて、上手い表現だなあと、私も味わい深く堪能させて頂きました。

  4. @ayami
    様へ

     どうもありがとうございます❗️(*^^*) 素敵なご感想のお言葉がいただけて、
    嬉しい思いでいっぱいです。感謝致します。♪
     リリーは、ノートパソコンが今手元に無くてiPadで作品を投稿しています。
    ワードを普段使わないものだから昭和の人!丸出しの、原稿用紙とキャンパス
    ノートを、いつも持ち歩いて詩作しています。(笑)
     職場でも、昼休みや休憩時間にササッと、走り書いた内容を書き溜めて手元に
    置いておくのですよ。
     詩作って…孤独な作業だと思います。詩人会であたたかいコメントに触れると、
    とても励みになります。ありがとうございます! ayami 様の作品が発表されると
    小さなワクワク感⭐︎わいてきて、いつも楽しみに拝読させてもらっています。
    (*´∇`*)

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