トカゲのピアノ曲

鎌倉のあたりに上陸する
トカゲのピアノ曲
先代の遺言にあったように
モーツアルトでなければ駄目
岩場から押し寄せる
海藻がらみの操指でなければ駄目
僕はいま、タキシードで婉曲にからまる特許を待つ
ステップするピアノ、立ち上がるバイオリン
喜ばしき南極越冬隊
そして無理やりに円熟の境地でコーナーを加速する
スケーターの疲れが筋肉を傷めつける
それでも指先は木に登るヤシガニの
海風(かいふう)、南風(なんぷう)、ガチャガチャ
叫んでいるコバルトの
強烈なジャングルのホワイト
すぐれたシャフトで放出される砲丸のように
フルートのシャツがブルーの光で
ぐあん、ぐあん、とすれば
パセリのように船はくねりつつ飛ぶ
蜥蜴の処刑台から はすかいに飛ぶ
旅行代理店のカスタード
地震計は正常に稼働している
ガリガリと室内空間を移動するピアノ曲は
すでに故郷へと帰還せり
ハマナスの花がゆれている
真夏の海浜音楽堂
ただピアニストが
いない。

投稿者

岡山県

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