飛越とその誇り

 竹柵に
 水壕に
 生垣に
 バンケットに
 すぐに慣れたわけじゃない

 平地競走で勝てなかったから
 障害競走を走る馬になった
 けれど十八回走って一つしか勝てなかった
 そんな馬が
 覚醒したのは明けて六歳
 中山大障害三連覇

 もはやハンデ斤量青天井
 平成九年、春の盾を賭けた芝の上
 もとより勝ち目はあまりに薄く
 それでも
 まっ平らなコースに戻ってきた愛馬を
 馬主は、調教師は、調教助手は、厩務員は
 きっと誇らしげに見つめていたのだろう
 
 竹柵も
 水壕も
 生垣も
 バンケットもない
淀の直線
「大外からポレールまできているぞ!」
アナウンサーは叫んだ

そうとも
まで、の意味を背負って
 後方からゴールに向かって突撃する馬の名は
ポレール!
 その疾走こそが北極星なら
 
力を蓄えろ
 信じ続けろ
 魂を挫けさせるな
 と、照れずに一度言ってみろ

投稿者

兵庫県

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