ふれる
鳴りやまないあの曲も
きっといつか終わってしまう
絶対に忘れたくないあの歌も
たぶんそのうち忘れてしまう
改札口に吸い込まれていったのは
今はもういない誰かが
いつかは大切にしていたはずの宝物で
きらきらとまぶしくて
痛い
届くはずがないと思っていたものにふれたら
こんなにもあっけなく気がふれてしまった
きらきらした痛みを
文字に置き換えていく真夜中が好き
見てきた夜をひとつずつ答え合わせしながら
目をとじて飲み干す瞬間が好き
喉元を滑り落ちていく氷みたいに
痛みがすこしずつ溶けて薄まっていくと
くちびるから
聴いたことのない新しい歌が
あふれる
鳴りやまないあの曲や
絶対に忘れたくないあの歌と同じように
この歌が色褪せてしまう日が来るとしても
祈りを込めるように
静かに指先で
ふれる
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