メールヒェン

 朝の光の まだ
 ささない頃に
 女が一人 歩いているのは
 悲しみの為ではないのです
 古い傷跡を 探る為でもないのです

 新しい 光の出る所を求めたいのです
 夜の酒場の空しい華やかさに倦み果てた女が
 すがすがしい朝の光を求めたいからです

 一人で暮らす様になってから
 女の周りにはメールヒェンが消え失せ
 少しばかり醜い欲望と
 少しばかり詰まらない自棄っぱちの軽音楽だけが漂い
 それに気づいた時 女は美しい涙を流しました

 長い長い間 忘れていた事でした
 生きていくのにメールヒェンこそが大切なのだと

 朝の光の まだ
 ささない頃、女は一人で
 足音だけを後にしたがえて歩いていきました

 朝の光の出る所にぶつかったら、必ずメールヒェンは心に
 戻って来るのだ と
 信じて歩いていきました

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 私も、メールヒェンが足りてない、です。
    メールヒェンこそが大切!
    ほんとだ!

  2. @あぶくも
      様へ

     お読みくださいまして、ご感想のお言葉!いただきまして、
    どうもありがとうございます。♪( ´▽`)
     この作品は、「複色のばら」を書きました時、手元に仕上がり
    ました姉妹編になります。
     推敲を重ねて、今回投稿してみました。お読みいただけまして、
    とても嬉しく思います。
     この作品と、もう一作がありまして三部作になっております。
    次作で、投稿予定しています「黒い波」という作品ですが…。
    自分では力作なのです。作風が、お好みに合わないものかも
    しれませんが…。もし、よろしければ、こちらの作品も、是非
    お目をお通しいただけますと、幸いでございます。m(_ _)m

  3. 70年代に見られる詩的表現のように感じ取れましたが、それ以前に一編の作品としての完成度の高さに頷きました。

  4. @ゆーき
      様へ

     はじめまして。お読みくださいまして、ご感想のお言葉を
    お寄せいただきました事うれしく思います。どうもありがとう
    ございます。m(_ _)m
     時間をかけて推敲致しましたので、いくつか参考にしました
    作品からは、かなり影響を受けております。…(笑)
     これからもどうぞよろしくお願い致します。

コメントするためには、 ログイン してください。