グイデルの思い出
グイデルは昆虫を愛していた
そのため多くの国を巡って多くの昆虫を集めた
ところがある日、虫の世界に吸い込まれてしまった
はたして人間が虫の世界に行くと
彼は王のように虫たちから崇められた
そして枯れ草から造られた「城」をプレゼントされた
乾いた枯れ草の城は快適であった
ある日、彼は城を出て近くの岩山に登った
朝陽が輝いていた
するとそこへ一匹のトンボがやって来て
この国の偉大な「滝」を見に行きましょうと言った
彼はトンボの背中に乗ると空高く舞い上がった
・
ところでグイデルの精神の内部に存在する
多くの欲望の内で
真に彼自身にも理解されていないものは
太陽への反抗である
何故そのようなものが存在するのかは
彼自身にも不明であるのだが
彼は太陽を否定していた
それは心の奥に存在するものである
・
偉大な「滝」は何キロにもわたって
大量の水をそそいでいた
しぶきは空高く舞い上がり「虹」を作っていた
彼はトンボの背中からそれを見た
長い時間彼はその光景を見ていた
その後彼が人間の世界に戻って来たのかは
よくはわからない
ただ一匹のコガネムシが言うには
彼は長く虫の世界にとどまり
枯れ草の城の中で
息を引き取ったと言うのである。
コメント
最後にコガネムシに語らせるところなど巧みです。