032
昨日と同じ色の
昨日と同じ匂いの朝に
気紛れに買ってしまった
オリーブグリーンの傘を開く
慌しさのほとりに
淡い緑色の翳が落ちて
治りきらないささくれの端を
少し丸めてくれる
穏やかに降りしきる雨は
朝の喧騒さえも優しく手なずける
湿気で膨らみ過ぎた心には
タイヤの軋みさえ反響しない
囚われ人のような視線を
舗道の上に這わせながら
執拗に語りかけてくる雨音を
黙殺し続ける
ようやく辿り着いた
地下鉄の入口から
唐突に吹き上げてくる風は
わずかばかりの正気を
取り戻させてはくれるけれど
改札を何度すり抜けても
行き先の書かれた列車は
プラットホームに入ってこない
雨曜日は続く
コメント
快適な比喩表現が連続し気だるい梅雨の湿度の中を滑らかな風が通り過ぎたようです。
@たかぼ さん
>コメントありがとうございます
過去の詩をリライトして写真詩にしてみました。
写真の方がイマイチなので梅雨の間に撮り直したいのですが。。。
雨の中にカメラを持ち出す勇気がありません(笑)
まあ、スマホでもいいんですけどね。
今頃の、都心の街の淡々とした雨風景を想ってみました。個人的に、飯田橋界隈の、外濠に沿った光景を。オリーブグリーンの傘を開く。雨曜日は続く。…映像が浮かんできますね。
@長谷川 忍 さん
>コメントありがとうございます
飯田橋界隈のそのあたりは学生の頃よく目にした光景です。
たぶん記憶のどこかに残っていたのかもしれません。
東京という街には詩の種がたくさん落ちているような気がします。
ただ、それを見つけるのは簡単ではありません。