火 刑
いつもわたしはそう言っていただろう
のぞまれてその限りある肉体を放ち
美の中心に魂は燃えて行くのだと
何かの消滅を恐れているのか
どろどろとみちしるべは燃え上がる
生きものは灰白の眼をひらき
凍りつく湿原を歩きはじめる
灰色のオーロラだけを見るのだ
背嚢の内にあるものは苦しみだけだ
空から降って来る硫酸のようなもの
過去はガルバリのにおいがする
押し殺してこのうす汚れた大気の底に
めざましいものはすべて
石炭色の地獄へ落ちた
ガラスの管が右の肺から左の肺へと貫かれようとする
その管の中をすばやく流れていく
火刑の印
いつもわたしはあなたの耳もとに
くちよせて言っていたではないか
この魂の中心に美は燃えつづけているのだと
熱く、甘く、愛しいものよ
コーカサスのヒツジのために編まれた額かざりを
あなたは窓辺に置いている
外は雪だ
炎が部屋の中を暖めている
だからわたしにもこの氷の手を暖める時間をすこしくれ
春のことを言うのは今日はやめておこう
あの美の中心にあなたがいたことを
枯れ枝は十字に組まれ、壁にかざられている
誰も見たことのない炎
地上と地獄にかつて誰も見たことのない炎
熱いミルクティーを飲みたいのです
犬たちだってこんな夜は外に出たくない
石炭をもっと足しましょう
いつもあなたは幸せについて考えている
それだから北の森の針葉樹は燃えている
わたしがヒツジを連れて行くのです
火刑の森へ
いまだ誰も見たことのない炎を上げて
祭壇の上に立つのです
いつもわたしはそう言っていただろう
あなたのためにそう言っていただろう
ヒツジは燃え、祭壇は燃え、
わたしは燃える
あなたはどうする?
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