ベテルギウスと猫
冬の夜空は暗く、静かで好ましい
白い吐息でさえも美しく映るものだ
即ち冬の夜は白 即ち冬の夜は黒
モノトーンの静謐こそ本質
だから、その無彩の深海にぽつり輝く
いっとう明るい赤星が大嫌いだった
赤星はまるで炎の如く、未来への明らかな希望たらん
願いとは即ち、過去への後悔だ。
愚かしいほどの過去への執着だ。
ベテルギウスとはつまり過去だ。
其の光は過去の幻影に他ならぬ。
明日になったとて何も変るまい。
われらもきっと、何も変るまい。
——博識ぶった猫は其う呟いて、瞬くベテルギウスを睨め付けた。
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