加速
線で満たされていく
形ばかりの電話帳と
電話帳ばかりの形
ただ笑い続けるコップが
羨ましかった
助走
午後に向かって
身体や言葉から
剝がれていく
ちぐりすからの手紙が届く
ゆうふらてすの訃報が記されている
何が食べたいか最後まで決まらなかった
と追伸にある
ふと正午を告げる音楽が流れ
渡り鳥の生態を
あやふやにしたまま
町で唯一の鳥類図鑑は
閉館してしまった
剥がれた破片を拾おうとして
指を切る
痛くて血の出ない傷のようなもの
なだらかな化繊のひだに沿って
濁っていく
剥がれていく
午後は午後を走り出している
加速していく
コメント
加速していくわれわれの世界のどこにも「みたされないもの」の匂いだけが水にとけて流れつづけるように片方の手は水球にふれているだけだろうからそのうちに地面はひびわれた泥の河となりちぐりすそしてゆーふらてすよ「わたし」を呼べ・・・。
「線で満たされていく 形ばかりの電話帳と 電話帳ばかりの形」この始まり方、かっこいいですね。そして文章はどんどんと加速していく。
坂本達雄さん
コメントありがとうございます。何か凄いコメントいただいた。
「片方の手は水球にふれているだけ」
いやいや、凄い。坂本さんの詩が好きで、ぽちぽちといいねだけ押させていただいてます。
たかぼさん
コメントありがとうございます。
当初は、助走、で書いていたのですがいつの間にか加速していました。