初鳴き

 今年は季節の巡りが定まらず
 戻り梅雨に降る雨の
 街で 蝉が鳴いてます

 初夏も過ぎると その年の
 誰かにとって一番はじめに聞こえた声、
 その方向へ視線を投げた人もいるでしょう

 夜半の雨音で目を覚ました翌朝
 濡れたアスファルトの路面に
 陽射しはどこか懐かしい様な旋律をハミングして

 一人で 洗濯物を干していたら
 マンションの壁面に反響し始める蝉の鳴き声
 ほんの短い間クレッシェンドすると、
 途絶えてしまいました

 戻り梅雨に降る雨のあがった街を
 そぞろ歩くと
 音も 私もほんとうは
 光とひとつになって風車みたいに回っていて

 だれかにとっても
 一番はじめ鳴いた一匹はもう
 いないのです

 
 
 
 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 七夕を過ぎましたが、今年は、まだ蝉の鳴き声を聞きません(東京の台東区です)。…もうすぐ鳴くかな。二連目、いいですね。誰かにとって一番はじめに聞こえた声…。私自身の、この半年をふと振り返ってみました。

  2. @長谷川 忍
       様

     お読みくださいまして、ご感想のコメントをお寄せいただき嬉しく思います。
    どうもありがとうございます!(^ ^)
     この作品は、数年前に書きましたものを推敲して投稿させていただきました。
    こちらでは、先週からもう蝉が鳴いております。日中、暑いですぅ。(ーー;)ゞ
     梅雨が開けたら、一番はじめに聞こえた声の主は、もう街にいない。
    生き急ぐ…蝉の鳴き声にふと、切なさを感じて書きました。もう、
    今年も半年過ぎたのですね。

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