手紙

手紙を書きました

数滴水を硯に落とし
お気に入りの奈良の墨
ゆっくりゆったり磨る
磨り終わって
古びた筆を持つ
まるで
時が留まっているかの様でした

謹啓
友故に礼儀正しく
謹んで心を込めて書きました

炎暑三伏の候
四季折々の風情が届くように
時候の挨拶を書きました

御清祥のことと
友を敬い讃えて慶んでおります

陳者
申し上げますと本文に入れば
友の顔が自然と浮かび
気の向くままに書きました

御自愛被下
お体を大切にされます様に
お願い致しました

頓首敬白
卑簡を詫びる気持ちで
頭を下げました

今日の日付を書き
自分の名を書き
友の名と殿の字を書き
脇付けは硯北と書きました

宛名を書いた封筒に
手紙を入れて閉じました
その閉じ目に
手紙が無事届きます様
緘の字を書きました

既読も
既読スルーもない

タイパの悪すぎる

妖精が住んでいた時代のお話

投稿者

兵庫県

コメント

  1.  こんにちは。こちらの作品を拝読させていただきまして、
    拙いわたくしのタワゴトですがコメントを失礼致します。

     「賢い大人の手紙の書き方」といった本に頼り、私も
    アナログなお手紙を書く事がございます。便箋を選ぶところ
    から投函するまでに時間を費やします。
     けれども、私は一度たりと…この作品にございます一通の
    お便りを誰に投函する事が出来ただろう!と、恥じる想いの
    致しました。
     この作品には

      友故に礼儀正しく
      謹んで心を込めて書きました

    と、あります。

     人は…お互いが離れて在ればこそ、ひとり。この作品には
    話者の友への尊敬といたわり、生かされて共に歳月を歩みます
    ことへのよろこび…その深い心情が、満ち溢れているように
    思えました。
     素晴らしい!詩だと感じます。
     どうもありがとうございました。
     わたくしの感想を述べてこれ以上コメントが長くなっては
    いけませんので、ここで失礼を致します。

  2. リリーさん

    お便り嬉しく存じます。
    便箋選んでる時楽しくないですか。
    鳩居堂の近くに行くと、ついつい吸い寄せられちゃいます。
    便箋ホイホイです。
    筆や墨も見ちゃうんですけどね。
    リリーさんのお部屋にも妖精が住んでらっしゃるんですね。
    時代遅れにはお気をつけくだされます様。
    またのお便り楽しみにしております。
    匆匆

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