小さきものよ

もう骨と皮ばかりだ
いまもいびきをかいている
鼻が詰まって口が開いたままなのだ

毛並みは汚れて乱れ
両眼は潰れ
赤い剥き出しの腫瘍が痛ましい

妻はとうに泣き疲れて
無言で風呂の掃除をする
皿を拭いて棚に戻す

少しでも気を緩めれば
正体不明に嗚咽するので
夫は張り詰めて夜中まで仕事する

窓を開ければ
夜は静まり返って
月はこの小さな生き物を見つめる

いつしか四つの瞳と四本の手が
月と共に白い生き物に添うて
すべては眠りにぐったりと落ちていく

喜びも悲しみも
つかのまの生の
つかのまの眠りに

投稿者

茨城県

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