送電塔から

送電塔から

ゆっくりと真実から遠ざかり
かつまたそれらは膨張する
プリンキピアの登場から340年ほど経つのだが
わたしはすでに彼を知らない
いや、そうではなくて
彼はその時わたしを知らない
そのように送電塔が語るのを
夕暮れの散歩道で、いかにもランダムに聞くのである
ベストな解答ではなくとも
極力、力学的には正解に近いものを提供しようではないか
原理に忠実に、公理に抵触せずに
一般的認識を逸脱することなく
それでも真実の言葉として疑いのない結論として
あなたはわたしの愛を失った
送電塔がそのように発言するのである
ジャマイカの釣り船から
糸を垂らしている時点で
おそらくは、万物に質量を与える量子と言うものが
あなたのわずかな信頼の思いを踏みにじり
核からの軌道距離をいくつかのレベルに分けるのだと言う
それは愛についても言い得ることなのだと
この送電塔は言うのである
とんでもない空中への放射
ファインマンとノイマンがキャンディーの味について
軽く論じている
ペットの猫についても
それから川にそってだらだらと道はつづいている
正しく言うのなら
ここで送電塔は一礼した
彼等の科学への貢献は
さみしくもあり、ちょこざいでもある
そのような解説を
ここで送電塔がするのである。

投稿者

岡山県

コメント

  1. 送電塔が何者かの比喩であるとしてその何者かの発言を送電塔に任せたことによって重い課題がコミカルになってなかなか良いなと思いました。

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