晩夏

少女は空を見上げた
 私は少女をぼんやりと見つめた
  意地悪く翳る夏に
 もう視界も定かでなかった

少女は点々と曇る地面を見下ろした
 私は傾く少女の後ろ姿を見やった
  じわじわと滲み出す路面は
 もう秋の色に満ち満ちていた

  水か涙かの見分けもつかぬまま
 死にゆく暑さを生まれ来る涼しさが覆う
昨日の哀しみは明日の喜びの源泉となる

水も涙も柔らかに溶け合って
 幽明の境に産声が上がって
  瞳は上がる 坂道を駆け上がる 眩しく見送る——

投稿者

茨城県

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