ビアホールで
好みの飲み物を手に
男たちが雑談をしている
もう熟年を過ぎた男たちだ。
初夏の西陽が
窓から眩しく降りそそぐ。
郊外の駅からほど近い
瀟洒なビアホール
男たちは談笑しつつ
ビールや
ウイスキーを口にする。
男たちの声は聞こえない
店員も、彼らに気づかない。
夕刻を過ぎた頃
男のひとりが
ふと皆に目配せをする
ゆっくり頷き合う
悪戯っぽく。
やがて、男たちは
本当に見えなくなる。
仕事帰りの勤め人たちが
ビアホールのドアを開ける
それぞれの飲み物を注文し
一日の疲れを
ほのかな酔いに任せる
ほら、そこは
さっきまで
男たちが座っていた席だ。
コメント
つい2年前は、当たり前すぎる光景なのに、
既に、ノスタルジックすら感じるほど
激変だったということなのかな
激変のときって濃密だから
ドイツビールが似合いかもね
あの世のおっさんたちだってうまいビールを酌み交わしたくなるさ、暑いんだもの。ましてやコロナも関係ないしね。
生きとし生けるものはみな分厚い肉体に汗をかきかき働き、そうでないものは涼しげに透明な笑い声をあげてそこにいるのだ。
らどみさん
ドイツビール、いいですねえ。ビールの美味しい季節なのに、緊急事態宣言とは…。辛い所です。幽霊も我慢できなくなったかな。
王殺しさん
私も、そろそろ、分厚い肉体を脱いで涼しくなりたいところですが、まだお迎えが来ません。もう少し、この世でジタバタ生きていかないと…。最近のビアホールは、浮き世と、異界、ともに可のところが多いみたいですよ。(^_^)
こういう素朴な謎の次元は本当にあるのでは、と思わせる世界にいざなわれます。
黒田三郎や菅原克己の詩を想起しますが、これはまぎれもなく長谷川さんの優れた詩だと思います。
ああすばらしい。
追 : 工夫して、飲みながら末長く生きましょう(^^)
なんか、凄い詩を読んだ気がします、最後も素敵ですし、全体の気負わない軽さが、某ビールメーカーさんなどはこの詩を、新聞広告で使ったら素敵じゃないかと邪念してしまいました。
服部さん
菅原克己の「ブラザー軒」という詩を意識して書いてみました。菅原さんのこの詩にも、幽霊が登場しますね。怖い幽霊ではなく、優しく、切ない幽霊…。
timoleonさん
ビールメーカーさんの広告に使っていただけたなら、本望です。少し控え目な、瀟洒な幽霊を描いてみたいと思ったんですね。
なんだろう、最後の連で不潔さを想起するような。違っていたらすみません。よく見る居酒屋の風景、けれど今は遠いみたいです。
りゅうさん
同じ席ではあるのですが、現実と、異界と、次元が微妙にねじれている…、そんな感覚で書いてみました。現実を生きていて、時々、そういう錯覚に陥ることがります。
すもません。脱字がありました。錯覚に陥ることがあります。…です。
再び、誤字です。すもません ⇒ すみません です。m(–)m