諦念

 いくつかの迷いの旅を終え、自らの内に素を 宿すようになったのか。  出会ったのは、そんな頃だ。小柄で、いつも ぽつりとした姿だった。人に刃を向けたりはし なかったけれども、時折、こちらの肌に染み込 むような眼差しを見せた。  大陸の旅の話を聞いたことがある。バスが何 度も故障で止まるので、砂のしぶきの道を … 続きを読む 諦念