素晴らしき世界

蚊は何故、人の血を吸う時に、痒み成分を残す?
それが無ければ、気付かれずにミッションを終えるのに。

私はそこに、神の意思を見る。
生命の偏りなき更新と循環を保つための、非合理が齎す、愛の悲劇を見る。

ヴァンパイアに血を捧げる人。

人助けほど、効率が悪く、愛の悲劇はない。

蟻や蜂の中に、怠け者がいて、それらが三年寝太郎のような活躍をするという。
上手くいくことばかりではない。それが、素晴らしいではないか?

すべての生き物には、無敵にならぬよう、自爆スイッチが入っている。
私はそれを、とても素晴らしいと思う。

蟹は何故、横にしか走らない?
ネズミやゴキブリは何故ピンクとアロマの香りとビジュアルを装わない?
真面目に働くアリは、ユーモアを問われて困らないのか?
マグロは何故、止まれない?
髭は何故生えてくる?
爪は何故途中で進化をやめない?
毛は何故、おかしなところに生えてくる?
言葉は何故、嘘をつく?
人は何故、歳をとる?
限りある命と、贖えない法則。そのすべてを私は、素晴らしいと思う。

投稿者

静岡県

コメント

  1. この詩の冒頭と全く同じことを思って詩を書いたことがあります。
    https://poet.jp/photo/643/
    荒川濁流さんのこの詩はそこから広がる壮大な生命の仕組み、役割の凹凸が組み合わされる世界のようなものへと言及されていて、その思いの馳せ方と「そのすべてを私は、素晴らしいと思う。」という最後に心惹かれます。

  2. 読ませて頂きました。大変共感しました。
    素晴らしいと思うと言えた時、僕の中でなにかが開いた気がします。絶対肯定。その力強さを感じて頂けたのではないか? と。ファーブル昆虫記のスカラベの観察は、手塚治虫さんもお気に入りだったと思いますが、生き物を観察した結果、全部肯定出来るようになったことは、観察者としての成長だと思っております。

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