醤油煎餅

小松のばあちゃんは
椿の花の陽だまりに
ひっそりと横たわっていました

ばあちゃんちは醤油屋で
十で子守り奉公に入り60年働き通したそうです
そんなばあちゃんですから
みんなは一升びんを下げて買いに行き
大きな樽のうらや
その影の中で子供たちが
かくれんぼしたり鬼ごっこしたり

子供がばあちゃんに抱きつくと
ばあちゃんの前掛けからは
いつも美味しそうな醤油の匂いがして

今夜は
その遺影のもとへ

空の一升瓶を片手に
たくさんの訪問客が訪れ
線香の香りよりも強い
醤油のにおいに
手を合わせ、目を瞑り
そして
蝋燭からそれぞれに火をもらい
一升瓶につめて帰っていきます

今年の醤油は琥珀色より少し深く

投稿者

コメント

  1. 私の目尻のあたりに 塩ぽいものが 潤んできました。もっと 小松の おばあちゃんの話を 聞きたくなりました。

    たまたま 私の祖母は 醤油屋だったんですよ。この詩の 真ん中で 揺れている蝋燭から 火を 私も いただいた 気分で います。読ませて いただけて 焼きたて お煎餅の ような 心地を いただいているところです。

    ありがとうございます。@るるりら

  2. @るるりら

    こんばんは。
    素敵なコメントありがとうございます。
    こちらまでなんだか、
    とても丁寧にお読みくださり
    改めて、ありがとうございました。

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