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冬のはじまり 申の刻
戯れに あなたを追いかけて
朱い鳥居を くぐる
くぐる くぐる
結界 そして 結界
気がつけば あなたの姿は
連なる鳥居の 何処にも見当たらず
戸惑うわたしを 誘うように
ふくよかな尻尾が すうっと
目の前に現れては 消えていく
足早に 辿り着いた
出口だったが そこは
出口ではなく 入口だった
振り返れば あなたは
ふくよかな尻尾を 揺らしながら
鳥居の連なりを 遠ざかっていく
首筋を冷たい風が 吹き抜けたけれど
心とは裏腹に 足はあなたを追いかける
追いかける 追いかける
結界 そして 結界
そして 辿り着くのは
いつも 入口
*
こうして わたしは
逢魔時に 閉じ込められたわけだが
今でもひとつだけ 思い出せないことがある
あなたは
いったい 誰?
コメント
こんにちは。こちらの作品を拝読いたしまして私は、第22回現代詩手帖賞を
受賞されました山本英子さんの詩集『青銅の蛇』の「きつね」の作品と、どこか
イメージが被ってまいりました。存在を見つめる目…でしょうか。魅力的な作品
だなぁ…と思いました。
@リリー さん
>コメントありがとうございます
山本英子さんの作品は残念ながら知りませんでした。
この詩は少し前に書いていた「妖怪詩」の名残りです。
写真は根津にある乙女稲荷神社で撮ったものですが
ひと気の無い神社は不思議な雰囲気に満ちていました。