花筏
落ちてくる花びらを
じっと眺めている。
こちらに向き直った。
明け方の雨で
池の水は濁っていた。
水面に浮かんだ花びらが
細い湾曲模様を描いている
花筏だと
教えてくれた。
足元を確かめるように
用心深く杖をつく。
ほとりに立つ。
日常だったものが
ある日を境に
日常でなくなってしまう
柔らかだったものが
塊になってしまう。
目が合えば
微笑んでくれる
恥ずかしがっているわけではない
自虐とも違う。
私は、寄り添うことを諦め
一緒に桜を眺めた。
落ちてくる花びらを
じっと眺めている。
こちらに向き直った。
明け方の雨で
池の水は濁っていた。
水面に浮かんだ花びらが
細い湾曲模様を描いている
花筏だと
教えてくれた。
足元を確かめるように
用心深く杖をつく。
ほとりに立つ。
日常だったものが
ある日を境に
日常でなくなってしまう
柔らかだったものが
塊になってしまう。
目が合えば
微笑んでくれる
恥ずかしがっているわけではない
自虐とも違う。
私は、寄り添うことを諦め
一緒に桜を眺めた。
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コメント
なんとも説明的になると野暮になってしまうのですが、通常が関係性は目に見えないものが。花びらの一つ一つがくっついたり、離れたり、塊になったり、するシーンが、見事にふたりの あわい となって見えました。
花の筏が美しく在るその近くで、寄り添えない関係が重なることがまた、変化してゆく美としてはらはらと散るように見えて、胸を揺らされた心地がしました。
花筏のはなやかなくせに何かもの寂しい情景。
それを眺める長く連れ添った二人。
流れてきた二人の関係性。
最後の連が僕の予想よりかなり深刻で、そこまでだったかとちょっとくるものがあった。
timoleonさん
そうですね。二人の「あわい」かもしれません。男女間は、割り切れないものがあります。日常、塊、羞恥、自虐…。二人のあわいを、花は咲き、散っていきます。
たちばなさん
寄り添えない関係が重なっていく。少しずつ積み重なって、もしかしたら、それが二人の原点に戻っていくののだろうか。たちばなさんのコメントを拝読し、そんなことを考えました。
王殺しさん
人は、結局は、独りなのかな、などと思う時があります。でも、「私」が、あなたに寄り添っていたいという心持ちは、信じたい。季節が、再び巡ってくるように。
最終連から深い愛情を感じます。ほんとうに寄り添うためには一度寄り添うのを諦めなければいけないのかもしれませんね。我を離れるというか。我を捨てるというのとは少し違うのかもしれないけれど、魂同士ってどうやったら一つになれるんだろうと、そんなことを思わせられました。
あまねさん
ほんとうに寄り添うためには、一度寄り添うのを諦めなければいけない。たしかに、そうかもしれません。互いの「個」を振り返ったうえで、再び、相手と向き合う、といったらいいのか。…うまく言えないのがもどかしいのですが。
七連目に、ふと目がとまって、何かと重なって、少しくるしくなりました。日常の大切さを、本当は日常で感じておきたいのに、日常がなくなってからしか、それに気づけないなんて。色んな思いが浮かんでしまいました(部分のところだけですみません、)。
@ぺけねこ
ぺけねこさん、読んでくださりありがとうございます。事実を背景にして書きました。苦しみは、ご本人にしかわかりません。寄り添うというより、ただそこにいることしかできなかったのかな…。