gastronome 61-70

　
61
ポカリスエットぐらいの朝
とぎ汁ぐらいの昼
赤ワインぐらいの濁った夜に
　
　
62
あなたにとってそれが詩であっても
台所のあなたのつぶやきの方がよほど詩的
日曜に寝っ転がってる僕にとっても
　
　
　
63
いつまでも紅いほっぺたのままではいられませんが
ずっと待ってる
って言ったけどそろそろひからびちゃいます
　
　
　
64
うたー の上の口は餅を食べる口
下の口は鬼を食べる口
その願いが世界中に届くといいね
　
　
　
65
うずくまる彼の悲しみの雨で
そうしてぬかるんだ彼の足跡に
種を蒔いてゆくのだ
　
　
　
66
鯵／秋刀魚　海鰻／甘鯛　団扇海老
沖潤目　鱓／石鯛　尾長黒
夕陽焼　鼻福／眼福　鱈腹途
　
　

67
南風原の米軍のゴミ捨て場でものを拾ってた
そのなかで、大きなチーズのかたまり
あのおいしさは忘れられない
　
　
　
68
うさんでえ候ら 親祖先ぬ
成したる此ぬ世ぬ むぬ想い愛さ
忘んなよ 忘んなよ
　
　
　
69
わたしの血となり肉となるもの
わたしの血と肉であったもの
なおらいこの世は現であったか夢であったか

70
コンプレッサーと虫の音、そんなことさえも
あの夜達の拠りどころだったと
今はもぐ人もいない実のように
風に乾いてゆく