唇に歌を
ほの暗い空に尖ってゆれ動く
銀杏の枝先 路端の枯葉
手袋はめる指先
冷たさ滲み
駅前
ためらうことなく夜を受け入れた街
バスターミナル
無人のベンチ
男物の手袋が片っぽうだけ
力なく 通り過ぎる人影を見つめていた
自宅近所のスーパーへ立ち寄り
嵩張った袋を下げる私が近付く出口扉
突然 横手から滑り込む様に現れる
小学一年生ぐらいの男の子
私も観たホラー映画『リング』のエンディング曲
「きっと来る、きっと来る」の節、
高い声は口ずさみながら
片腕を重量感あるガラス戸の取っ手へ伸ばし
ドア側面に肩を寄せ
落とす腰で体重かける
「ありがとう!」
私へ 目配せだけする彼、
歌いながら
駐輪自転車の連なる石畳を軽快な足取りで消えていく
こみ上げてくる 可愛いさ
車道跨いだ高層マンションの生垣に灯る電飾まで
いつもと違って
妙に ファンタジック
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