Okunoto 4 seasons

あじずしが浜町出店に並ぶ頃
親っ様の漬けた馴れずしがふるまわれ
キリコの灯が浜町をねり歩く頃
虫送りの火が畦道をねり歩く
やがて日が沈む頃
月が出るのを待っている
廃線脇で
次の電車と月が出るの待っている
虫の声と踏切りの音は
いつまでも
凸凹配位座で鳴り続けている
 
 
 
藻採り雪の近づくと
炉端できゅうきゅうと
支度をする祖母は
乙女に変わる
潮の滲みて来ないよう
きゅうきゅうと
生憎の戻り雪になるも
膝をさすりながら
華の起つ藻場
の向こうを眺めている
 
 
 
岬の先に桜が咲いている
三つの頃から
その向こうまで行こうという気持ちでいつも見ていた
けれど
ついこの前
シーサイドラインが開通した
幸いにも桜は倒されずに岬に残されたけれど
もうこちらとあちらのシンボルでもなく
僕らの憧れでもいられなくなってしまった
はじめて側に寄って
藤の蔓が上の方までつよく絡まっているのを見ていたら
ずいぶんと頑張ってきたのにね
と逆に言われてしまった
 
 
 
少し湿ったね と
旧道沿いの
あしもとのほうから
梅雨のにおい と
祖父のにおいがした
ふりかえると
あたり一面にシャガの花
思い出すひとがいるから
咲くのだろう
もう一度ふりかえると
祖父の家
明日から空家となる

 
  
 
 

投稿者

コメント

  1. 二番目の故郷かもしんない

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