せみのいのち

暗い土の中で
あとどれくらいと
日をかぞえ
いくつもの冬を越え
光の世界へ

でも
光の射す世界での
時間は刹那的で

土を出た瞬間のワクワクに
心を躍らせる暇もなく

ただ 自分が死んだその先の事に
命を燃やす

そして
結果に関係なく
終末は等しくやってきて

あれだけ夢見た
空を見る事もできず

その時 
何を思うだろう

夏の木々の木漏れ日か
蒼く澄んだ空に浮かぶ
綿菓子のような入道雲か

それとも

自分の人生はどうだったろうか

幼少期を
友とともに たくさん過ごした土の上で

大地に 
”おかえり”と、
囁かれる

その瞬間

自分の人生に

悔いはないのだと やっと気付き

ゆっくりと 胸の灯りを消していきながら

最後に

答える

”ただいま” と

投稿者

大阪府

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