砂漠旅情
男が
痛みだらけの砂漠のど真ん中
人質を取って立て籠ってる
木もなく水もなく
動くものは砂ばかり
渇きはいつからだったか
纏うのはハレモノのシャツ
震える手にもつ出刃包丁
女は
すっかり怯え顔ながらも
このあとの事について考えてる
欲しい物リスト
支払いのこと
さてインスタにはどの写真
いつの間にか絡まるロープ
目のなかできらめくカラコン
警官は
しだれ柳の物腰で
声を枯らして説得する
暑いだろ
苦しいだろ
そんなことはよして出てこいよ
割れた大地にツユクサの涙
お前は俺じゃないか
みんなみんな俺じゃないか
男は
水を要求する
六甲山のおいしい水2㍑
それと林檎
不揃いのな
ごくごくごくと混じりけのない
その水を女は飲み干す
あーーほんとおいしい!
警官は凶器を受け取り
小鳥たちのさえずりに耳を貸す
もう涙さえ頼りにせずに
ただ怯えずにやろう
出刃包丁で林檎をむいて
心を充たして
さてお茶の間のみなさん
よーく御覧くださいよ
にび色の手錠はあなたの手首に
今なら特別にもう1個ついてきます!
不謹慎の極みでも
くしゃみも出来ぬ電車の中
この指が動き続けてるんだ
ずっとずっと揺られてるんだ
同じ林檎の箱の中
ああどこまで行っても砂漠
ああああ結局は蛇足
コメント
絶妙に君の精神が病んできてるのがわかるよ(笑)。何か重大なことが起こっている風で、何も影響のない事件。人間の衝動の本質なんだろうな(ちょうど埼玉の立て籠りのニュースを見てる)。
今度は王さんの好きなやつ、来たーっ。
自己と他者の境界線が曖昧になっていくタイプの(あえて言うなら)愛を書かれたのかなと。
不揃いだけどみんな俺。
題を変えてみた。
元題「ある朝」
題を変えてみた。
「ある朝」→「グロテスク」→
題名を変えるというのは案外面白いな。
不条理なものを見せられていると思いきや、不条理な現実に戻っている感じで、今まで体験したことのない、面白さがありました。