季節
足元の小さな一段下
花が海に濡れた
昨日、きみが
わたしのために育ててくれた花
名前をつけそびれて
それっきり咲いた
木々の陰影
夜明けに私鉄が発車する時の
孤独な音のひとつひとつ
特定郵便局の裏口あたりで
局員が手指を海で洗っている
昔からそれは
春の訪れだった
名前もないまま
海に揺れているあの花は
多分わたし自身
窓、開けておいたよ
そんな季節の話に夢中になって
きみの横顔ばかり
ずっと見ていた
その後、二つ三つ
言葉を足した
生きることと
その不確かな匂い
わたしたちはここにいる
と、知った時から
きみと
結婚したいと思っていた
コメント
野暮な質問なんですが、たけださんって詩を書くとき、どういう手順なんですか?スルーでもokです
@花巻まりか
花巻まりかさん、コメントありがとうございます。
そういうのを語り合うのって面白いですね。
みなさん、それぞれだと思うのですが、わたしは最初の一行が全てです。最初の一行さえ書ければ、音楽でいえばコード進行に沿って言葉を置いていくイメージ。絵画でいえば筆を選ぶように言葉を選んで、タッチを決めて。
最初の一行は、気になった言葉、フレーズ。
奇抜なものでなくてもいいんです。
「朝食を食べた」が気になったら
朝食を食べた
コーヒーを飲んだ
途中で船に乗って
海賊になった
リビングの観葉植物に
朝日があたって
それが誕生日だと思った
すいません、即興なのですが、こんな感じで。
自分語りし過ぎたかな。花巻まりかさんのお話も聞かせてくださいね。
映画だなあ、と。
中でも局員さんの様子がとても好きです。
なるほど…江國香織みたいですね。センスなんだろうな。雨、アスファルト、コーラ、飲めない…
私は…事実に想いを織り交ぜロマンチックにしたてたい。が、全部嘘の気もします。
@たちばなまこと
たちばなまことさん、コメントありがとうございます。
なるほど、映画か。確かに、今回はシーンが最初に浮かんできて。それに言葉をつけていった感じです。
@花巻まりか
花巻まりかさん、お話きかせていただいてありがとうございます。
江國香織さんは、「すみれの花の砂糖づけ」という詩集が大好きでした。
全部嘘、わかる気がします。ごまかし、というか。その一方で、全部嘘、であることには意味と理由があって、そこに作者の本当のリアリティがある気がします。
誰にも開示されない、秘密の小部屋のような。