Saphiret

世界の作り方を
彼女は知らなかった
ただ感動したのだった
空があんなにも紅いことに

世界の作り方を
彼女は知らないまま
ただ夢中になった
あれは素晴らしいものなのだろうと

世界の作り方を
彼女は自分にも教えられなかった
だからこそ恋い焦がれた
その手の内の紅い空に

世界の作り方を
彼女は知るべきではなかった
いつかその空の紅さそのものが
彼女を滅ぼすから

世界は燃え尽きようとしていたのだ
彼女が恋したものは
世界の終わりそのものだったのだ
彼女自身すら気が付かないまま

空は美しかった
彼女が気づいて涙した夜にも
それは彼女がいつも見ていたあの空で
彼女が作りたかった世界のままだった

投稿者

神奈川県

コメント

  1. じつに論理的に語ろうとしているようです、それは世界を分析的に見ることからの、必然的ありようですから、世界は常にその視線から、逃れ行くことを希望する、それでも〈正確に〉〈見る〉ことへの、欲求はつづくものだと、思います、だとすると、言葉は、袋の中でしょうか? それとも言葉は袋から、出て行くのか? つぎの作品を見たいと思うのです。

  2. 禁忌というのは神々がつくったものではない、という思想も手垢でまっくろに汚れてしまった昨今、では何を正しいと信じ、間違いだと疑えばいいのかは、もう誰にも分からなくなっているのではないでしょうか。わたしはただそのカオスを書き残していたいのです。今を生きている人として。

コメントするためには、 ログイン してください。