月夜

月夜、
今ほどに夜の優しさを、明るさを思った時は、ない
かかる雲、静寂と水面に映る月、蛙のざわめき
その中にふらりと迷い込んだように、歩く

一人でいることを、誰もいないことを憂いだ時は、ない
一人のさみしさ、苦しさ、人のぬくもり
そうして誰かと居られることを、うらやむ

自分のことを、この想いを誇りに思った時は、ない
いったいどれだけの人が、この月を見ていられるのか
そう思えば思うほど、ほほが崩れていく

猫や、
君らは、ほんとうに
私の前を、悠々と優雅に

君らは、私が声をかけても
素知らぬ顔で、闇に消えていく

君らは、私の想いを知らない
好きであっても、嫌いであっても

君よ、
何も言わず、音もなく
夜に溶けて、いくのだろう

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