静謐

都心の駅に降り立った午後は曇っていた
人はまばらに寒そうに肩をすくめていた
線路沿いの金網には枯れた蔦が絡まり
その先端は宙を 虚しく

私はしばしこれといった理由もなく佇んだ
憂いの深き真昼時 人影はいつか消えていた
ふと雲が晴れた 懐かしい日が蘇った
瞬間 私の影は路面を濃く浮かび上がった

風が吹く 強く 私は急かされる
初春はいまだ肌寒く
希望のように空を仰ぐ 

空は再び目を閉ざす 俯いて
肩をすくめる者が ここにも――
帰路を急ぐ 無言で急ぐ―――

投稿者

茨城県

コメント

  1. 路面に影が濃く浮かび上がる場面、鮮烈ですね。初春の頃は、まだ影が濃く映ります。懐かしい日が蘇る、というフレーズも気になります。想像が膨らみます。

  2. @長谷川 忍
    さん、コメント、ありがとうございます。すでに真夏めくような日に冬の詩となってしまいましたが。。。
    いまだ自分らしい詩が確立されておりません。この詩も自分では満足できていません。精進するのみ、ですね。

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