眠りの道は暗中模索支離滅裂
眠りに入るということは 日常の意識がなくなるということで 生きていながら一時的に死んでいるのではないかなどと 考えたりすることがあるが 寝床に入ってすぐに眠ってしまうことはまれで しばらくは体は静かに横たわっているが 頭の中では無意識に 何かの思考が巡っていたりしていて 考えたり想ったりしていることが いつのまにか飛躍するというか沈降していくというか ふとなんで そんなことを考えたりしていたのか そんな脇道のようなところへ彷徨いだしていたのかと 我に返ったりして そのときは すでに夢の淵を浮遊していたのだが あらためて枕の位置を変えたり体を横向きにしたりして 本格的な睡眠の舟底に思考を沈め 夢の波間へ漂い出すのに身を任せようとすると すでに自分は自分ではなく 覚醒や睡眠の感覚も失われていき その瞬間を ここちよく受け入れていることもあるし その境目もわからずに すとんと眠りの海中に落ちてしまうこともあったりして 自己を失うときの いや意識を失うときの快感とはこんなものかと それはやはり生から死への ほんのちょっぴりの貴重な体験かなと思ったりするが このときの死の体験は すでに夢の世界の出来ごとであるかもしれず そこは異世界であり 日常生活からは引き離された空間であって それなりに愉しい感じもあり苦しい感じもありで ときには夢を見ながらも 夢であることがわかってしまい こんなつまらない夢から目を覚ましてしまおうと 冷静な自分が 夢の浅瀬で藻掻いたりするけれど 大概はお仕着せの向こう任せで 久しぶりに学校へ行くと席がなかったり 電車に乗ったら座席をさがしてウロウロ 車両から車両を危うくヨロヨロするばかり ハンドル掴んでアクセル踏んだら 車が勝手に猛スピードで走り出したり おとうちゃんおかあちゃんと おもわず声を出して呼びかけているのは いつの頃の自分であるか やっぱり親は親であり子は子であったと 驚き実感するのも光陰矢の如し なにがなんでそうなるのか 記憶の古いところから川は流れつづけて そこが誰にも内緒の魚の集まる秘密の淀みであると くねくねと大きな魚は群れて泳いでいるが 竿を振っても雑魚いっぴきかからず 帰り道は迷いに迷って 石灰岩のような白い山道を登ることに たしか柱状節理とか学んだ記憶あり その刃物のような崖の上に立ちすくんでいたりするのだが そこは夢の中だけでお馴じみの恐山で 気味が悪いのでさっさと去りたいのだが なかなか足が動かずじれったい 足まで深くバクに喰われてしまったのか お前はいったい全体かたつむり こんなおどろおどろしい企みは ポケットの奥深くに隠していたのに 寝る前に脱ぎ捨てたズボンのポケットから抜け出した 弱虫さみしんぼうの仕業かと 心が傷んだそのショックで つかのま忘失の死から此の世の生に引き戻されて 無事にふたたび この朝の始まりは 線状降水帯とやらの雲に包まれ どうやら寝ぼけて朝顔も開ききらず 夢のなごりの水たまりでは 雨あめ降れふれ賑やかに 雨だれ輪っかが胸騒ぎして 渦巻き現世はどうなることやら どんでん返しもあればとか でんでんむし虫むし暑い
コメント
長文だけど、リズムがあって最後まで読むことができました。
足立らどみさん
読んでいただき、ありがとうございます。