Avanti

詩人の友の「活動二十周年」を祝う
朗読会に出演した  

それぞれの闇を越えて、再会を祝う
ステキな言葉の夜だった 

トリの朗読をした彼が
最後の詩を読んだ後
客席の後ろにいたほろ酔いの僕が 
頭と頭のすき間から
「あんこ~る」の声を届ければ 
会場に手拍子は高鳴り
「しょうがないなぁ」と照れながら
彼はもう一篇の詩を、手にした 

その朗読で彼は
若くして世を去った詩人を惜しみ説教をした

「死んじゃうってことは、才能がないね」
「生きてるってことは、可能性だね」

それは金八先生を彷彿とさせる
語りであった

やがて朗読ライブがはねて
もう一人の出演詩人と、三人で
高田馬場のうまいラーメン屋の
カウンターに肩を並べ
味噌ラーメンにニンニクを少々入れて
レモンサワーをごくり、とやった

帰り際の交差点で
二人の肩に手を置いて
「三本の矢って、折れないから
 僕もがんばるからさ」

そう言った後、僕が以前に
「ぽえとりー劇場」という朗読会の司会をした
Ben’sCafeの跡地へ行き
ひとり佇んでいた

(懐かしい、言葉の夜の賑わいと
 もういない幾人かの詩人の面影を視ていた)

コロナ禍の二十三時
すでにシャッターは下りていた
現在の店の名前は「Avanti」

暗がりに光るスマホで
僕は電子の辞書を引く
気づくとなぜか
しょっぱいものが目に滲にじみ、拭いていた

「Avanti」

前へ、前進、もっと先へ

投稿者

東京都

コメント

  1. オレもかれこれ20年近く詩人をやっていますが、その中で出会った多くの人は既に詩を書くのをやめていたり、まったく連絡が取れなくなった人もいたり、オレが知らないだけで逝去したような人もいるかもしれません。でもオレはまだ生きていて、相変わらず詩を書いていて、先に進んでいるぜ、と当時の仲間達に伝えたいです(その一つがここでの投稿なのかも)。

  2. 私がはじめて詩らしい詩(今ここで発表してもよい程度の詩)を書いたのは高校生の頃なのでかれこれ40年以上自称詩人をやっているわけですが、まあそれはどうでもよいとして、以前他の方へのコメントでも書いたのですが、普段何気なく目にしている見ず知らずの老人たちの姿を見たときに、ある日、感動したことがあります。生きているというだけでそれは才能なんだと気がついた瞬間です。

  3. トノモトさん 

    時は流れている中で道は今も続いていると、僕も感じている日々です。

  4. たかぼさん

    日々の何でもないところに〝詩〟を見出すのが、詩人なのでしょうね。「生きているだけで才能」って、いい言葉だなあ。たかぼさんも、充分に詩人であると思います。

  5. 前進!しかし、時には立ち止まり、身のまわりや自分を見ることも大事かもしれませんね。
    この詩もそうですが、剛さんの詩での語り口が大好きです。
    今につながるさまざまな人や物事に感謝ですね。

  6. こしごえさん

    ありがとうございます。 立ち止まること、大事ですね。

    この詩については、僕の詩の道への願いを書きました。

    人それぞれに、歴史がありますね。

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