孤炎

岩を穿し水よりも
野辺渡りたる風よりも
幽として
また
冲として
うろに溜まりし夜半の月
思へば色は移りけりて
二度とは一にならず
数へれば憂愁は流れ流れて
止まる事を知らず
ただ我を失ひて紺碧の空を見
ゆくりなき憂き世の瀬は
尚尚我を見ざりき
幾年を経たとて
未だ境地に至らず
ただ衒悟に甘んじ
一人かこち
上りかまち
うちそとを隔て
超ゆる術は無し

投稿者

奈良県

コメント

  1. 凄みがあるなあ、といつも読み重ねるのでした。

  2. ゆくりなき憂き世の瀬は/尚尚我を見ざりき
    今も、昔も、人の世の宿命なのかもしれません。いつの世も、儚い。空しい。夜半の月に、狐炎を重ねる。幻想的です。

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