海──切断された微分された線の

 さまざまに貝殻の散らばる海の──足を思わず切ってしまいそうな──四度の和音によって、微分されていく空、空の空。面ではなくて、線の空が垂直に海に降りてくるところの光を、掌に押しとどめてつかまえなければならない。……ここは、そんな界隈。ガレキの堆積のように、不幸と幸福のうずもれた破片の時空が、それぞれ、人──もの、心──ため息、経験──死のように、いくつかの組になってカンバスのなかにバラまかれる。それは、陰惨な至福の残像。誰かの思い出と、誰かの憧れ。中空に透明な扉を開いたのなら、d音からするすると上がっていく。虹の爆発はすべからく世界を変えていくに違いなく……ト音とへ音の間にいくつもの波があり、それぞれの波は波どうしの重なり合いで、ここにも風が吹く(意外?)──そんなことはない。「そ〜んなことはなあい」と歌いながら、片手を肩の上に載せて、見えない過去の過去のかなたまで歩き出していく少年がひとり。

投稿者

宮城県

コメント

  1. 海の視覚と、音、音階が、絡まるように伝わってきました。視覚と聴覚は、絡まると不思議な余韻を残します。ラスト、過去へ歩いていく少年の後姿をふと想像してみました。

  2. 長谷川さま、ありがとうございます。勢いで書いてしまった、というのはあるのですけれど、最後、歩いていく少年の描写で終えられたのは良かったかなという感じです。

  3. 世の中いろいろあるしいろいろ言われ続けても、それでも私たちは歩き続けてきたし
    これからも歩いていくという、とても重苦しいけど、素敵な心象風景が拡がりました。

  4. 足立さま、ありがとうございます、あ、そういう共感かあ、そういう共感もいいですね。最後、少年は無限のかなたに旅立つのですけれど、いつか無限を突き抜けて帰ってこれるのかもしれませんね。

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