寝そべっていた第二ヴァイオリンの

寝そべっていた第二ヴァイオリンの

寝そべっていた第二ヴァイオリンのまぶたが微かにふるえ
細身の黒っぽい茶
隣にいる第一ヴァイオリンを補佐し太い倍音を出す
彼を追ってメロディを奏でることもある
ダダダダでなくまろやかなタラタタタタ
スラー付きの十六分音符の刻み
フォルテの刻みは死ぬほどしんどい
痛みを表す刻みの音色
硬いからだが彼女によって奏でられ
柔らかくなりまぶたが開きはじめ
二つの前脚を伸ばしても
ひざから下りていかず
ふたたび青色の目玉をかくし
優しい手で撫でられて
第二ヴァイオリンはにゃあと啼く

放浪し尽くした画家の供養をした
寺のある平野から
山が迫ってきて
桜色の音魂ひらり
妖精のいるような林間をはずれ
急な坂をのぼると
木の間から
第一の猫が足を止め
車を降りると
ヴィオラのような猫がこちらを見
白壁の小屋に入ると
木の壁と屋根に囲まれた広間に
お嬢さんのひざに乗っかった猫が
第二のヴァイオリンとして
耳を澄ませと伝えてきた

イーハトーヴの外れの
澄んだ小屋を建てた
老陶芸家とお嬢さんの
心づくしのお話と行いに
幸せな音楽と珈琲を奏でているのだ

投稿者

神奈川県

コメント

  1. ほんわかと良い味出ていますね
    、、、
    ヴィオラの大きさになってしまった
    第二ヴァイオリン

    ライオンはチェロになれるのかな?

    くまモンはバス停のトトロなのかも、、、

    賢治を読み返してみたくなったよ

    ありがとう

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