ひととき

壁に活けられた花は
店の仄暗い灯りに
瑞々しく咲いている
近付いてみて
造花なのに気づいた

造花なのに咲いて
あたりに華を添える
よくできているなと
コーヒーカップを傾け
手元の本に目を落とす

造花だから
色褪せない
色を忘れない
ずっと同じ時間に
とどまるように
散ることを忘れ
咲いたまま

店で過ごす時間も
止まっているようで
読みふけっていた本に
時間を忘れていたけれど
置き去りにしていた用事に
追いつかれ
しぶしぶ店をでる

店の壁には
変わらず咲く花
次に来る時も
咲いているだろう

投稿者

愛知県

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