何度転がってもただの石、ただの意志
さて虚言交わる夜狙い ● 匙加減間違わぬと願い
無機質なる囁き肺毟り ● 剥出す春騒めき這い虫
回転の快楽を享受して ● 晴天の諧謔を強化して
空耳の猿に常に怯える ● 虎の威借る狐に媚売る
アーキテクチャの自我 ● 歩いていくための因果
喪失まで間もなく泣く ● 壮絶な手までも白濁す
稀に劇的にして悲惨な ● 故に激突して飛散かな
走馬灯は騙し合い終了 ● そう纏うは魂の哀愁よ
唯一の障害は君の存在 ● 憂鬱の正体は君の残骸
素通りするのは背徳感 ● ストーリー巡る愛読者
踵返しルート反復が吉 ● 歪を知ると感服し放置
石を積み上げまた崩す ● 意志の罪は贖えず狂う
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.056: Title by 槙原由乃]
コメント
ビジュアルすごいなぁ。左右の字数もそうだけど語感や連想されるものなどの計算がみごと。
個人的に
空耳の猿に常に怯える ● 虎の威借る狐に媚売る
が好き。空耳の猿、おもろいなぁ。
韻を踏んでいるところ、めっちゃいいですね。トノモトさんの詩には金属的な何かを感じるんです。たいていの金属も熱せれば加工出来るから、腕のいい職人さんみたいな。(水銀は常温で液体でしたね。)
お気に入りは「踵返し…」の行です。
とてもきっちりとしている詩の姿に感動します。このきっちりとしている詩の姿からも、詩の生命を感じてすてき。
各行がみんなすごいのだけれど、私の場合は、
走馬灯は騙し合い終了 ● そう纏うは魂の哀愁よ
と
石を積み上げまた崩す ● 意志の罪は贖えず狂う
が好きです。
カチっとした形式に詰め込まれた言葉のチョイス、韻、立ち上るイメージが見事ですね〜。
強烈にイメージが流れ込んでくる。これは強烈です。ぼくのなけなしの語彙力が吹っ飛ばされる心地よさ!
真ん中の黒点の連なりが脊椎を想起させ、その左右に伸びる文は神経に見立てると、「骨は石」、「左右の文章は意志=神経を伝っての電気信号」と捉えることで、ひとつのビジュアルを越えた作品として立体性を高めてくるなぁ、と印象深く感じとりました。