傷のこと

蜩(ひぐらし)の かなかなかなかなかなかなかなかな・・・・・・と歌う歌声が
空へ心地好くひびく
一人 林の陰に立ち 傷を思う

傷の増えた この銀製の指輪は
あの人が亡くなった頃に求めたものです
この銀の指輪の傷は
あの人の声ではなかろうか

ある時の私は、
誰かの心を傷つけてしまう時もある。
あなたの心に傷をつけたその時は ごめんなさい。しかし
あなたは「私はそんなに弱くない」と言うでしょうか。
誰かの心を私が傷つければ私自身も傷つく。
けれど
心の秘密の宝は自分以外の誰にも傷つけられません。
この心の秘密の宝は秘密だから
秘密の宝を見ることも、
秘密の宝に触ることも、
秘密の宝を傷つけることも、
秘密の宝を大切にすることも
自分以外にはできないのです。
けれど
今も心の傷は痛む時がある
こういう時は 心の痛みをなぜるように
「だいじょうぶ。私の全てをとは言えないが、
私は私を知っている。・・・・・・
この心の痛みに私の心は試されているのだ」
というようなことを言いながら
傷のある銀の指輪の肌を指で少し触る
このような指輪はお守りです

心の傷の深さは いのちの深さとつながっていて
私の いのちを育てていく

蜩(ひぐらし)の かなかなかなかなかなかなかなかな・・・・・・と歌う歌声が
空へ心地好くひびく
一人 林の陰に立ち 傷を思う

投稿者

新潟県

コメント

  1. 情景は一瞬なのに、そこで描かれる心情の奥深さは永遠にも似てる。アクセサリーは、古くは呪術的な意味合いがあるとされていますが、いつも身につけることでそこに魂みたいなものが宿るように思います。記憶とか他者との繋がりとか、そういったものが銀の指輪ひとつに込められていくんですね。

  2. 心の傷は感傷かもしれないしトラウマかもしれない。指輪の傷をみていつかの心の傷に向き合う。
    傷を思うことは過去との邂逅でもあり、祈りかもしれない。

  3. トノモトさんへ うん。そうですねぇ。野暮を承知で言えば、この詩の一部は作り事です。けれど、「あの人が亡くなった頃に求めた銀製の指輪」というのは実際の話です。たった今もこの銀の指輪を私はしています。
    トノモトさんが言ってくれた通り、指輪は本来そういう呪術的な意味合いがあるそうですね。(また、指輪をする指によってもその意味が変わるそうですね)トノモトさんがそういうふうに言ってくれて、私はうれしい。
    まあ、別に自分にとってのお守りというのが、この詩では銀の指輪だったというだけで、その人にとってのお守りみたいなものが別の何かでもいいのだと思います。たとえば、好きな人とか家族とかから頂いたハンカチとか何かでも、自分がお守りと思えば。うん。たとえば こういうのは一つの思いですね。
    トノモトさんがこの詩の思いを汲んでくれて(それをこうして伝えてくれて)ありがたいです。ありがとうございます。

  4. 王殺しさんへ うん。そうなのかもしれませんね。王殺しさんが言ってくれた通り、心の傷にも色々とあるでしょうね。
    指輪の傷を見て心の傷を思うのはキッカケにすぎません。(私の記憶力なども複雑なので、一概には言えませんが)この詩の話者ではなく作者である私自身は忘れっぽいので、細かいことは良いことも悪いことも忘れてしまいます。しかし、(普段は忘れていても、その時のキッカケでふと思い出すし)大きなことは忘れられない。王殺しさんが言ってくれた通り、心の傷に向き合うことで今を肯定したいし、肯定できればすてきだと思います。
    うん、王殺しさんが思いを汲んでくれて、そう言ってくれる。そして、祈りかもしれないとまで言ってくれることにも、たいへん感謝します。うれしい。ありがとうございます。

コメントするためには、 ログイン してください。