教室

教室の隅には魔物がいる
夕日に照らされ
長く伸びた影の肩の辺りに止まって
子供達は先を争って
魔物と契約を交わす
ひととき王様になれるから
遅れた子供は息を殺して
家来の役を引き受けた
破られたノートや
配られなかったプリントは
魔物が隠したから
毎日宿題を忘れる理由を
先生が尋ねることは一度も無かった
優越感と
仲直りの駄菓子
子供たちには
大事な駆け引き
王様と家来
互いの自尊心を知れば
魔物が守ってくれる
大人には踏み込めない領域で
こうして
子供たちは
大人になったものだが
今の教室には魔物がいない
かわりに
子供が魔物になったり
先生が魔物になったり
時には校門を破ってきたり
そうして
魔物に出逢えないまま
育った子供たちは
人間になれずに
夕暮れのあたりを今も彷徨っている

投稿者

富山県

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