三月の紫陽花
遠く離れた東京の女子大に
君は入学することになった
レストランでお祝いと送別の
食事会を終えたのは昨日のこと
今日 ホームセンターに行くと
まだ三月だというのに
初々しいピンクの紫陽花が
園芸コーナーに並んでいた
公園にイルミネーションが灯るまで
君はピンクのヘルメットを被って
自転車や一輪車に乗る練習をした
君にはお父さんがいないから
私が練習に付き合ってあげたね
小学校の入学式はまだ先なのに
君はピンクのランドセルをしょって
大はしゃぎで家の中を歩き回り
そのまま晩ご飯を食べた
お母さんがくれたメールの
写真を見て私も笑ったよ
淡いピンクの光を世界に投げて
紫陽花も君を祝福している
一鉢買って帰ろう
これから一人で学生生活を送る
君の前に新しい世界が開けてゆく
身体だけは大事にするんだよ
自分を信じてがんばるんだよ
別れ際に伝えた言葉を
一人住まいの自宅で思い出しながら
紫陽花に水をやる
寂しくなるな
あんな言葉で良かったのか
やがて だんだんと
三月の紫陽花に祝福されているのは
私の方なのだと 分かってきた
コメント
最終連で一気にぐっときました!
こしごえさん、コメントありがとうございます。写真がその紫陽花なんですが、何の工夫もなくドオン!と出し過ぎの感があるなあw。実はスマホで撮ったのを、入学式が終わった頃合いを見て、その女の子にラインで贈った写真なのです。こちらの投稿に使用することになるとは思わなかったけど、まあ撮っといて良かった。 ではまたよろしく!
ピンク色で、しかも三月の紫陽花というのが、とてもとても心に沁みました。
泣きたい時、心ぼそい時に、何も伝えなくとも温かい気持ちが伝わってくるようです。
ザイチさん、コメントありがとうございます。そのように言ってもらえてこの詩を書いて良かったなと思いました。
今後ともどうぞよろしく!
あんな言葉、でよかったのだと思いますよ。情感が伝わってきました。ピンクの紫陽花、きれいです。
長谷川 忍さん、そのように言って下さり、ありがとうございます。
別れ際の言葉などほとんど考えておらず、「じゃ、元気でねー、バイバイ」みたいなことになるのだろうと思っていたのですが、いよいよさようならの時になって、少々あらたまった時に出た言葉は、しかしやっぱり普通っぽいものでしたw。
特に「がんばる」がダサいな、頑張れない時に頑張れと言われると逆効果と言うし、臨床心理も少しは勉強したことがある者としてダサかったな、と思ったりもしたのですが、考えてみるとそんなことは関係なく、オッサンが嘘偽りなく思わず知らず口にした言葉として、あれでよかったのだと今は思っています。今後ともよろしく!
なんてせつな優しい詩なんだろう。
虚構の入り込む余地がないほどに、ラストの心情が泣けますね。
あぶくもさん、コメントありがとうございます。
ラストの方、書きたいことがまあまあ伝わったかなと思うと嬉しいです。これからもよろしく!
じんわりいつまでも滲み出るように慈愛を感じます。
とても素敵な詩です。
たちばなまことさん、コメントありがとうございます。
慈愛と言われるとくすぐったいですが、とても嬉しいお言葉です。これからもどうぞよろしく!
あああさん、こちらこそ、ありがとうございます^^。