掌、繋いで
夏叫ぶアザミの棘に触れながら
お祭りの賑わう途を行き行きつ
予てから繋ぎそびれた掌は青く
夕暮れの震える空に恥じらいと
それぞれの秘密を抱いた蜂月よ
子供らが戯れて落とした林檎飴
朱染まり金魚の鰓によく似てる
先刻から蝉の時雨はもどかしく
彼の人の膨らむ腹に目を遣って
ひっそりとあの子が語る徒言は
奥様は不実の稚児を産みなさる
静やかに思わず僕は啼いていた
しどけなく広がるままの薄闇に
緩やかに溶け込む影の行方追い
忘れじの浴衣の裾のはためきよ
心では詮無きことと知りつつも
遠くから眺めることも恐ろしく
不穏なる背中に浮いた汗を拭き
息荒らす女の咽喉を不思議がり
突然にきりきり足掻く様を見て
死の匂いあるいは生の芽を感じ
血に塗れた小さき犬を堕胎する
恍惚を頬に貼り付け嘲笑うゆえ
嗚呼これぞ僕の苦悩の終わり哉
大輪が深まる真夜に咲きこぼれ
耳鳴りの続く季節のはじまりよ
青の身を案ず少女にまた出会い
もう二度と誰ぞ想うは罪と得も
裏腹に笑みを交わすは謎と成る
なぐさめや人の哀しき業でなく
ふいに触れたし掌のぬくもりよ
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.094: Title by yurara]
コメント
私がトノモトショウ氏の作品を高く評価している理由の一つは、いつも氏の作品が一生懸命作られているなと感じさせられるからです。いや誰だって一生懸命作っているのでしょうけれど、その真摯さが伝わるかどうかということです。次の作品はどのように作ろうかと真剣に考えなければ、これほどまでに毎週金曜日にコンスタントにハイレベルの作品を作り続けることはできないでしょう。そして推敲に推敲を重ねて、絶対の自信とともに世に送り出しているに違いないのです。私だってそうです。私が投稿したすべての作品に対して、私は推敲に推敲を重ねて絶対の自信を持って皆さんの前に提示しているのです。そうでなければ読んで下さる方に対して、その人の使う貴重な時間に対して、失礼だと私は感じてしまうのです。いや別に、私はそう思うってだけですから、衝動的に作って気軽に披露するというスタイルも有りなんでしょうけどね。
ここでも読むことが出来て興奮しました。
読む時の自分のコンディションによって、目に留まるものが違って感じます。
でもどれも蜜みたくて癖になります。
ああ、またヤバいの来たな。
この中毒性はほんとにヤバい。(語彙力!)
五七調のリズムに原風景と性衝動がないまぜとなって、アングラだし。好きとか嫌いとかそんなもんじゃなくて。背中に刺青したくなるような日本語
やられた感は半端じゃないですね。w
夏の日々が始まります
最高の夜
代え難い深夜の空気
祭りの喧騒
女の子のうた
夏祭りの雑踏の音はなぜか秋や冬のそれとは違い、近くの声も遠くに感じるのは僕だけだろうか。
現実がなにか遠くの話であるかのように、今触れ合う手もなにか遠いそれこそ遠い夏の日の思い出のような既視感のようなそんな離脱した感覚。そんな感覚を読みながら蘇らせた、
風光や風情、そして肉体的な空気感、そうして詩力を持つ感情など、さまざまな物事においての描写力がすばらしいです。
そして、文学的な深くて新鮮な味わいを味わえる詩だと感じます。
社交性も自尊心も、なにもあらわせないぼくですが、またここで綴ってもらえたら、なぁって、わがままです。
ほそぼそやってゆきます。