沢庵

沢庵

春だというのに
凍えるような夜だった。
お店の戸を開けたとたん
湯気で
眼鏡が、曇った。

けいこさん差し入れの沢庵で
泡盛のお湯割りを頂いた。
お手製の沢庵は、よい塩梅であり
下心ありそうなしょっぱさでもあって

鳴樹さん
けいこさん
マスターに
おーちゃん

みんな、沢庵みたいだ。
すっかり社会に漬かっちまっていて
ぬかるんでいて
でも変なところが純情で
ほどよく助平で
滑稽で。

谷中、初音小路。
大人の横丁だと
ずっと思ってきたのだ。
今夜の沢庵は
私がいちばん年長なんだってさ。

ようやっと身体が温まってきた頃
お店の古い柱時計が
ほっこり、明日を告げた。

投稿者

東京都

コメント

  1. 泡盛のお湯割り、のあたりでお店の景色が見えてきました。
    自分がよい塩梅に漬かっているかどうか心配です(笑)
    いつまでもパリパリとした食感を残したいと
    純情でほどよく助平でありたいと思ってしまいました。
    とても素敵な酔詩ですね。

  2. @nonya
    nonyaさん、ありがとうございます。この頃、沢庵とか梅干しとかをお肴にして、焼酎、泡盛を頂きます。これからの季節は、やはりお湯割りですね。世知辛い世の中ですが、あまり尖らず、純情になったり助平でいたいです。

  3. 谷根千キターーー。さすが渋いですねえ。差し入れの沢庵から自分たちが沢庵みたいってところが愛おしい素敵な詩ですね。私もそういう空気感の場と人たちで、豆腐餻を爪楊枝で薄く小さく削って舐めながら泡盛飲みたいです。

  4. 味わい深いです。
    幼少期は沢庵を噛まずにいつまでもしゃぶっている子でした。
    今も同じかもと、この詩を読んで気付くのでした。

  5. @あぶくも
    あぶくもさん、千駄木に友人が住んでいまして、友人の馴染みのお店でした。彼に誘われ、一時期よく飲みにいっていました。その時のことを思い出して書いてみました。友人が転居してしまい、しばらくお店ともご無沙汰です。…ほんとうに美味しい沢庵だったのです。

  6. @たちばなまこと
    たちばなさん、私も、子供の頃は、しゃぶっていました。ぬか漬けにした、おこうこ(…今、おこうこっていうのかな?)を、母がよく作っていました。時々、漬物を買ってきて、それをおつまみに焼酎を飲んでいます。

  7. 沢庵みたいな人たちに囲まれている人生って幸せなのかもしれませんね。私はそういうのを避ける傾向にあって、かなり損をしてるのかも?。何しろひねくれてますから。

  8. @babel-k
    babel-kさん、私は、元々ぽよんとした性分でした。詩友のひとりから、尖ったところを無くしたら、あんた、人間、終わりだぞ、と突かれましたが、…まあ、性分ですね。そういう意味では、私も損をしているかもしれません。…人生、むずかしいなあ。(泣)

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