色褪せる
かつての風景を思い出す度に
地を這う落葉にも思いを馳せて
それを停滞だと嘆く僕らは
いつの日か、川の流れを静寂と呼んだ
流れていくせせらぎに身を任せ
枯れ木はいつしか大海へと流れ着く
それを滑稽だと嘆く僕らは
いつの日か、木々の紅葉を灰色と呼んだ
千年生き続ける大木にも
必ずいつかは終わりが訪れる
それを虚しいと嘆く僕らは
いつの日か、小鳥の歌を雑音と呼んだ
家の軒先で小鳥が鳴いていた
母を失ったそれは泣いていた
それを哀しいと嘆く僕らは
いつの日か、日々の風景を人生と呼んだ
そして僕らは気づく
いつの日か、世界は色褪せるものだと
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