小さきものよ

もう骨と皮ばかりだ
いまもいびきをかいている
鼻が詰まって口が開いたままなのだ

毛並みは汚れて乱れ
両眼は潰れ
赤い剥き出しの腫瘍が痛ましい

妻はとうに泣き疲れて
無言で風呂の掃除をする
皿を拭いて棚に戻す

少しでも気を緩めれば
正体不明に嗚咽するので
夫は張り詰めて夜中まで仕事する

窓を開ければ
夜は静まり返って
月はこの小さな生き物を見つめる

いつしか四つの瞳と四本の手が
月と共に白い生き物に添うて
すべては眠りにぐったりと落ちていく

喜びも悲しみも
つかのまの生の
つかのまの眠りに

投稿者

茨城県

コメント

  1. 2024年の1月1日に記しますが、これは数か月前に亡くなった愛猫の末期の姿です。この詩を書いてしばらくして旅立ちました。いまもふと思い出し、体が勝手にむせび泣きしそうになります。もっと撫でてやればよかった。もっと遊んでやればよかった。いまは後悔ばかりです。でも、ありがとう。こんな私のところに来てくれて。お前のことは忘れないよ。あちらに行く時には絶対に会いに来いよ。帰宅するといつもニャアニャアいいながら犬のように玄関まで出迎えに来てくれていたじゃないか。待ってるぜ。

コメントするためには、 ログイン してください。