数を失くしたパール

ヤバい
その位で丁度良い
もう無理だ
それで味わう
果実もあるのだ

湖の底から
聞こえる
古(いにしえ)の部族の太鼓の音は
僕の背筋を凍りつかせ
恐ろしい挿絵の中に
逃げ込んでいた
無無明
そして高速で飛ぶ
燕の通り道を
知らずに
塞いでしまっていた

はっ!として
燕に胸を貫かれる
その刹那
逃げて!と
遅れて声を上げ

くちばしと羽が
僕の胸骨を貫き
やがて通り道は出来た

自由のタンゴで君は
45度と135度に
その両足で
Vの字を
描いた

指の透き間から
それを視歓する
コリオリのチカラ

球体の中で
液体が跳ね
君が僕の胸をくぐるとき
床には光る真珠が
転がった

エナメルの球に
我々が映り込み
燕がそれを
くちばしで挟むのを見た時
罪悪感を感じる程の
やすらぎを覚えた

湖の水が
全て消えてしまうまで
彼が同じ様に
集めた真珠で
湖を埋め尽くすのを
僕は静かに見ている

投稿者

東京都

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