甘い弾丸

マロン
パンプキン
チョコレート
季節は色を孕んでいる
あの子への愛はまだ漂っていますか
わたしへの愛として余っているなら
ぜんぶあの子にチャージしてほしいの

秘めた熱が浸み出る十月だった
夜の神社の灯りも 副都心の強い光も
滲むくらいに汗ばんだ一日目と
痩せたからだが雨におかされ
はや足で振り切るように抗った二日目と
大通公園の白い息と 富良野の雪景色と
名前を赤い痣に記した夜と
長く短く尊い日々は
永遠にすらなってしまった

あなたと来た記念館を18年ぶりに訪れたよ
ああ こんなふうに
語り尽くしたようで終わらない
知る人たちがいるかぎり 書き残されるかぎり
時が止まった小学校で 先生のオルガンが咲いている
ああ 空の國を
甘い弾丸で撃ち落とせたらと鳴いたの
左胸のあたりが鳴いたの
花の色 雲の影
星のまたたき 手を伸ばす子ら
なつかしい くるおしい 思い出たちよ
また さようなら 今日も
美しい明日の日のため
 
 
 
 

 
*『巣立ちの歌』(作詞 村野四郎)より部分的に引用しています
 

投稿者

東京都

コメント

  1. 巣立ちの歌って、
    花の色 雲の影
    ですよね。卒業式で歌われる歌で一番好きなやつだな。

  2. 鳴いたの、って二回繰り返すところが好き。
    胸がぎゅっとなる。

  3. @大覚アキラ
    さん。
    私も卒業ソングは巣立ちの歌が1番好きです。歌詞とメロディのマッチングが美しくて、歌いごこちもよくて。
    大人になって歌詞を熟読して、胸が熱くなっちゃった。

  4. @あまね/saku
    さん。
    飼っているヒメウズラ が「きゅーん」と鳴く声を聴いているときの、胸の締め付け感に似ています。

  5. 全盛期の萩尾望都(私は大ファンなので)の漫画のセリフのような一連目から始まって二連目、三連目とたちばなさんらしさで盛り上がっていきます。たちばなさんの中で最も重要なテーマの一つなのですね。

  6. @たかぼ
    さん。永く読んでくださっているから、テーマも知ってくださるのですよね。とても光栄なことです。思わない日は無いのですが秋には色付いて降り注ぐものですから。

    ポーの一族の作者さんなんですね。(タイトルだけは見覚えがあり。検索して読んでみます)
    冒頭は、甘くて、秋のお洋服の色に使われる食べ物たちです。

  7. @大覚アキラ さん
    うわぁー
    俺も1番好きです
    歌いたい

  8. 流れる歌のような詩ですね。心地好い。

    語り尽くしたようで終わらない
    知る人たちがいるかぎり 書き残されるかぎり
    時が止まった小学校で 先生のオルガンが咲いている

    なつかしい くるおしい 思い出たちよ
    また さようなら 今日も
    美しい明日の日のため

    こことここ が 特 に好きです。でも、この詩に愛があふれていて、この詩全部好き。

  9. @那津na2
    さん。
    ここにも巣立ちの歌好きがいた!

  10. @こしごえ
    さん。
    村野四郎記念館は小学校の一部を移築した建物の1教室にあります。
    たまたま音楽室で年配の男性職員さんがオルガンで童謡を弾き語りして、外国の観光客の若い女性たちに大盛況で。
    美しくてエモーショナルな空間を体験しました。
    曇り空に低くてまろやかな歌声が溶けるように。

  11. この作品の1行を抜きとるのなら、やはり、
    あなたと来た記念館を18年ぶりに訪れたよ
    になってしまうかな。20年以上前の思い出で、
    詩サイトのoff会に行ったときに元気印の子が、
    短パンで足をさらけ出してて、その子と北海道の
    昆布の話しをしました。この子怖いなと思った。
    今も何処かで元気で頑張ってるんだろうなと
    なんとなく思い出しました。

  12. @足立らどみ
    さん。
    らどみさんの思い出のお部屋をノックさせていただいたのかしら。ひとの心を鳴らせることは光栄なことです。
    元気と昆布と怖さの関連性がだいぶ気になります!
    いつか聞かせてください☺︎

  13. 2連目にぎっしり詰まっているであろう作者の濃い記憶など知る由もない読者の私にさえ、切なさで胸が引きちぎれるような感覚を呼び起こさせる詩って、ほんとスゴいなぁ。詩自体が甘い弾丸だわ…。最後もとても良いですね。

  14. たちばなまことさんの詩はいつも真っ直ぐ見つめていて、ふわふわとしか書くことができない自分には、眩しい。現フォで過去のものが読めるみたいなので読み返してみようと思っています。

  15. 村野四郎の特異であるところから、その神経のはりめぐる大地と言うものを、保存している空間が、ありふれた場所に、人のいきづく声とともにある、ところ、ひとつの自然の声として、彼の声を聞く、できるだけ、さえぎるもののない、空間に言葉を置きたいと、我も思う、そこに立っている、精神とともに。

  16. @あぶくも
    さん。
    あぶくもさんは鋭いなあ。
    そうなんですよ。『甘い弾丸』というワードが先に浮かんで、つらつらと書いたらこのような詩になりました。
    その感覚を刺激出来たことも、素敵に褒めてくださったことも嬉しいです。ありがとうございます。

  17. @たけだたもつ
    さん。
    眩しいだなんて、なんと嬉しいことを。
    ありがとうございます。
    私は人格が直線的、もしくは赤裸々なので、逆にたもつさんの様に優しくてレイヤーも効いていてさらさらした詩にはならないのです。
    それぞれ素敵だなぁって思うのですよ。

  18. @坂本達雄
    さん。
    この度も返詩のように美しいコメント!
    ”神経のはりめぐる大地”って素敵な表現ですね。
    おっしゃる通りで、人が存在する限りは自然の声だったり空間だったり終わらない意識なのだと感じます。

  19. てのひらの甘い弾丸を、「ふう」っと空に届くように打ちはなったような。本当は言葉では足りないのに。でもそれでも。そんなことが浮かびます。

  20. @ぺけねこ
    さん。読みにきてコメントまでしてくださって何より嬉しいです。
    空間で感じた弾丸を受けたような心地を書きました。
    ピンポイントであのひとに当たるといいな。

  21. 何度か読み返し、ちょっと、切ない気持ちになりました。二連目、よいですね。郷愁の情感でしょうか。

  22. 「先生のオルガンが咲いている」
    このフレーズに、情景が鮮やかに浮かび、私もその場にいたような感覚になりました。惹きつけられた素敵なポエジーです。

  23. @長谷川 忍
    さん。何度も読み返してくださったんですか。嬉しくて握り拳を作りました。
    はい。いつかの郷愁なのだと思います。心がいつも多重構造で時間が流れます。

  24. @渡 ひろこ
    さん。音楽室のオルガンの音が曇り空の下、木造校舎に響いて、こころが動かされたひとときのことで。
    ちなみにジャポン玉を聴きました!年配の方特有の声の揺らぎが美しかったです。

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