午睡

 あの頃
 一軒家の二階にあった子供部屋
 二段ベットのわきに敷かれたラグで寝そべる母を
 きっと 襲った猛烈な睡魔

 喋りまとわり付く幼かった私は
 ギューッ、と両腕に抱きしめられると縮む 
 ゴム人形
 母の両手で 
 オト立てて閉じられる
 折りたたみ式おもちゃ箱の蓋 
 「もう、寝よう!」
 とだけ 聞こえて
 洗いざらしなワンピースを伝い感じる肌のにおいで
 移ってしまう 
 母の眠気

 気づけば
 もう 薄暗い部屋

 窓に
 西陽は差していたのだろうか
 起きた母は夕飯の支度を始めていたのだろうか

  思い出せば
  すでに 
  父は帰らず母一人きりだったのだ
  あの頃
 
 
 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 御母堂に愛されていたのですね。最終連… 哀しいです。

  2. @レタス
        さまへ

     お読みいただきましてコメントをくださり、嬉しいです。どうもありがとう
    ございます!m(_ _)m
     洗濯石鹸の香りするワンピースの胸元から、肌の匂いで伝わって来る眠気。
    そんな記憶を、ふと辿り書いてみましたら当時の若かった母の疲れというものが、
    あらためて心に伝わってまいりました。^ ^

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