温かな「場」と言葉の絆
この度思いがけずご依頼があって、ポエコラを書かせて頂くことになりました。私なんぞでいいのかな…と恐縮しつつも、ご指名頂いたことが有り難く、雑感程度しか書けませんが、ご笑覧頂けたら幸いです。
少々自己紹介させて頂くと、詩は小学生の頃から書いていましたが、謂わゆる「現代詩」を書き始めたのは四半世紀前からです。当時ご近所に住んでいた画家の方のアクリル画に、詩をつけたのがきっかけで、イマージュを言葉で表現することに、ドーパミンが溢れる感覚を覚えました。
それ以来凡庸な主婦の私に、詩というツールは精神的支柱となり、これまで歩んできた人生の軌跡となっています。波瀾万丈の人生を乗り越え、精神をコントロールするために、その時折での詩作は、謂わば「魂の救済」となりました。
詩歴としては大雑把な概要ですが、そんな感じで、「継続は力なり」を信じ、ポツポツと詩を書いております。
閑話休題。
さて、ネット詩に初めて投稿したのを遡ってみると、2007年2月から参入しています。
「現代詩フォーラム」が最初でした。当時所属していた同人誌が解散となり、作品発表の行き場を失くした私に、こんなツールがあるよと同人仲間から教えられたのが、きっかけです。それから暫くは「現代詩フォーラム」を中心に投稿していました。偶に他のネット詩サイトを覗いても、批評の応酬が激しかったりで、自分の性に合わず、素通りしていた感じです。
ぽえ会は10年以上前になると思いますが、第1期の旧日本WEB詩人会に少々投稿しています。きっかけは当時高田馬場にあったベンズカフェ(2011年閉店)で、初めてたちばなまことさんにお会いし、それからmixi等で交流したことを介して、ぽえ会の存在を知りました。
ぽえ会の特徴は他の詩の投稿サイトと比べ、「場」が温かいですね。ジャンルを問わず投稿者の作品を丁寧に読み、率直な感想を述べ、作者と読み手が詩を分かち合う。
真摯な姿が印象的でした。
そんな詩に対する純粋な「場」をリアルに肌で感じたのは、那津na2さん主宰の詩誌『ROKURO』のメンバー(那津na2さん、たちばなまことさん/Mさん、timoleonさん)のライブでした。ネット上ではなく、生身で詩と音楽を共有する機会に恵まれ、詩を愛する者を広く受け入れてくれる、寛容で純度の高い空間に身を置いた時、煩悩が浄化された気持ちになりました。
この『ROKURO』のメンバーの皆さんの詩を通しての絆、温かさ、お人柄、作品への真摯な姿勢に魅了され、今日に至っています。
そうは言いつつ、私は寡作なのでぽえ会への投稿は少なく、傍観ばかりで申し訳なさもあります。ぽえ会は精神性が高い言葉の絆で結ばれている、貴重な詩の投稿サイトなので、私も臆せず詩作品、言葉を発していけたら…と思います。皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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最後に10月のぽえ会投稿作品から、印象的だった作品を挙げせて頂きます。
題 諦念
作 長谷川忍 2023.10.07投稿
「彼女の中にある諦念の源をずっと考えていた。」
作品後半にあるこのフレーズに、長谷川さんの人に寄り添う優しさや温かさを感じます。
また私事ですが、以前第二詩集『囀り』を出した時、〈根底に諦念がある〉と感想を頂いたことを思い出しました。作品のモチーフになった女性の心の奥底にある「諦念」が、詩を書かせるのだな…と思い、自分を重ねて拝読していました。
「死を主題にした散文詩を書き続けた。」
この作品の〈彼女〉は死をテーマにしながらも、「諦念」が詩の原動力となり、生きるための糧となっている気がします。見えないもの、答えのないものを求めて、詩を書き続ける姿が浮かびました。
題 甘い弾丸
作 たちばなまこと 2023.10.09投稿
第1連の「あの子への愛はまだ漂っていますか
わたしへの愛として余っているなら
ぜんぶあの子にチャージしてほしいの」
このおそらく母としての想いが
第4連の「ああ 空の國を
甘い弾丸で撃ち落とせたらと鳴いたの」
このフレーズに繋がっているようで、たくさんの時間の経過と切なさを感じました。
「時が止まった小学校で 先生のオルガンが咲いている」
この一行が情景を鮮やかに浮かび上がらせ、切なさの中に豊かな詩情と希望を描いて印象に残っています。
題 ジャズの詩(過去の詩、終)
作 wc. 2023.10.15投稿
「夜の汀に
静かに打ち寄せる旋律が
月を濡らし
とびきり無垢なくらやみ」
第1連冒頭から惹き込まれる詩情があり、メタファーの使い方も上手く、熟達さを感じました。
「1/fのゆらぎの夢」
このフレーズがジャズのスイングを連想させ、言葉のリズムもよく、情景も鮮やかに描かれていると思います。全体的に大人のムーディなジャズの旋律が流れて、映像的であり、詩の世界観を堪能出来ました。
渡 ひろこ プロフィール
長年詩を書いています。
詩集は『メール症候群』『囀り』と2022年に上梓した『柔らかい檻』の3冊。
詩は人生の軌跡。寡作ですが、その時折の立ち位置から見えた景色を描いています。
それから…たまに会う詩人のお仲間と飲み会するのが、一番楽しいです。笑
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